昨日の敗北に、今日腹を立てる愚

人生相談 相続
【相談者】68歳女性 夫68歳 (二人暮らし)長男43歳 次男35歳

母は既に他界、父が亡くなった際の相続について、
父は生前口頭で、遺産分割について子供(相談者と姉、弟)に伝えており、
概ねそれに沿う形で分割協議書に捺印した。
しかし、父が言い残していた金額よりもかなり多くの遺産が出て来た。
その大部分は弟が相続することになったが、
両親が苦労して建てたかなり立派な、土地と屋敷については、
「守って欲しい」という父の遺言もあり、弟にはその維持費として、
更に2千万円を渡すことにした。
私と姉の相続分は、結局弟の1/4程であった。
父は生前、甥(弟の子供)が結婚したら、家を建てる様にと、
弟に土地を購入していたので、弟はそこに二世帯住宅を建てて住むことに。
本来は父母の実家を守る約束で、私と姉は不動産の相続を辞退したのに、
全く釈然としない事態となってしまった。
約束が守られないなら、遺産の再分割など何か対策は無いものだろうか?

弁護士 中川潤先生の言葉

不動産の登記変更や、預貯金の分配などが行われたという背景からして、
公的に通用する形での「遺産分割協議書」が作成されたものと思われる。
貴方にはっきりとその記憶が無く、印鑑証明を渡したことは記憶されているなら、
きっと分割協議書は、弟さんの責任で作成されたものと思われる。
そこに、分割の条件として「生家を守る」という内容がはっきりと記され、
「以下の条件の下で、弟がこれらの遺産を取得するものとする」。
等が明記されているかというと、多分されていないと思いますね、どうですか?
また、お父さんから貴方への手紙があるそうですが、
もしそれが、遺言として通用するものであったとすれば、
その時点で裁判所の検認を受け、遺言証書による相続手続きとすべきだった。
しかし相続発生時点で、その手紙の存在を認識していたにも関わらず、
協議による相続として、手続きを完了させてしまった。
後からその手紙を持ち出しても、誰も認めてはくれないだろう。
人間は心変わりをする生き物であり、法律もそれを禁じてはいない。
約束は約束として、はっきりと明示されていない限り、
「心変わり」を「約束違反」として争うことは法的には大変難しい。

パーソナリティ 加藤諦三先生の言葉

事実はひとつでも、その事実の解釈は人の数だけ出て来ます

約束は破られるために存在する

筆者が思うに
誰でもいつかは通らなければならない「修羅の道」、相続。
でも修羅場とならずに、円満に遺産分けをして、亡き父母にお別れをする人も多い。
本来ならば、この世に生を受け、慈しみを以て育てられ、遺産を遺してくれた父母に、
感謝の念から、平等にそれらを分割し、兄弟姉妹揃って墓前で掌を合わせる。
遺産相続とは、家族にとっての悲しみを、前向きな決意に変えてくれる機会でもある。
にも関らず、何故こんなに醜い憎しみや怒り、失望に満ちた修羅場と化してしまうのか?
その原因は、生前の「準備不足」「認識不足」「心得不足」であろう。
生きているうちに自分のお墓や、戒名なども準備する人が増えているという。
大抵は「縁起でもない」という意識から、敬遠されがちな事でもある。
準備万端整えるということは、相続であれば「公正証書遺言」の作成や、
兄弟姉妹など、想定相続人による事前の話し合いなども、修羅場を避ける予防策だ。
なにより、相続法の手続きの実態や、法律の趣旨なども含めて、
「予習」がなにより重要なことは、言うまでもない。
本相談では、この「予習」をしたのは、最も多くの遺産を相続する弟だけだった。
だから、「協議書」とは何か? 作ったか作らないかすら認識が薄い姉達は、
ひたすら弟の「心変わり」を、「約束違反」として腹を立てる結果となる。
こうなる前に、既に軍配は上がっていたことに気付かない。
笑顔で家族を「解散」させるために、両親が元気なうちから準備をする。
それをしない方が、よほど「縁起が悪い」ことになる。


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